【終了】10月20日指圧セミナー『横臥位の反作用圧法/上肢の筋膜ライン』

9月15日開催の報告が以下のページにまとめてあります
【報告】(9月15日) 指圧セミナー『押圧操作の基本(反作用圧法)』

※ 10月20日:終了(当治療室セミナー参加経験者限定)

指圧セミナー『横臥位の反作用圧法/上肢の筋膜ライン』を10月20日に開催いたします。今回は応用編として、当治療室の指圧セミナーに参加されたことがある方に限定して開催いたします。前頚部指圧について、胸鎖乳突筋の前縁の基本圧点の他、難易度が高いですが高い効果が期待できる総頚動脈と気管の間の圧点をとるコツ・方法、前頚部の筋についての考察、横臥位肩甲間部の流動圧法や肩甲下部の反作用圧について、時間をかけて考察・練習をいたします。

また、肩甲上部や肩甲間部のコリがなかなか取れない場合、肩甲骨に付着する周囲の筋にアプローチすると効果的な場合が多々あります。とにかく肩甲骨の周囲全部を施術するのもありですが、機能的単位に基づいた筋・筋膜の繋がりを理解しておくと、より効果的な施術ができます。

Thomas W. Myers が提唱する “Anatomy Trains” の概念に基づき、横臥位で肩甲上部、肩甲間部を含めた上肢帯を効果的にリリースするための筋膜ラインを学習いたします。

またセミナー開始前に『ボディスキャン瞑想体験講座』を開催いたします。参加自由・無料で行ないます。手技療法との併用で相乗効果が期待できる他、施術者自身の感覚を感じる力を高め、より深い集中した状態で施術を行なう訓練ともなります。(セラピューティック・マインドフルネス)

10月20日/横臥位の反作用圧法/肢の筋膜ライン

§1 横臥位の反作用圧法

1. 前頚部(左)

頸部の角度調節法
  • 下側の足(右下肢)の膝関節・股関節をやや屈曲位にする。
  • 「首の角度を調節します」と声掛けをして、左手の手掌を<受け方>の下顎に沿え、左前腕は<受け方>の鎖骨に沿わせる。右手の手掌は後頭部をそっと支える。
  • 腕の力で首の角度を調節するのではなく、術者の骨盤を後方へスライドさせることにより、前腕で<受け方>の鎖骨から後ろに引く。体幹とともに頸部の角度を広げる。

※ このとき、右下肢がまっすぐになっている場合だと、体幹と首の角度を調整したときに、<受け方>の腰椎に捻りが加わり、窮屈さ、もしくは不快を与えてしまうので注意

前頚部押圧の仕方
  • 膝を接地する部位は、<受け方>の腸骨稜のラインよりほんの少し仙骨に入ったあたりが良い(上後腸骨棘あたりが目安)
  • 始めから<受け方>の前頚部を向いて、体幹をまたぐと、押しての腰椎に捻りが加わってしまい、姿勢が窮屈になる。よって、まずは<受け方>の頸部のほうを向かずに、まっすぐ前を向きかぶる。その後、骨盤より体幹を開く。すると腰椎の捻りが加わらない状態で、<受け方>の前頚部に対することができる。
  • 前腕の角度が重要。上腕と前腕の角度は気功のように大きなボールを抱えるような角度にすると良い。すると、前頚部も伏臥位の肩甲下部と同様に腰の動きで押圧ができる
  • 気管と総頚動脈の間を取る。そのまま押すと皮膚がつっぱって<受け方>が苦しくなるので、2横指ほど外側に母指を触れ、皮膚のみを内側にたぐり寄せ、気管の脇に近づくとともに、母指を立てる。すると総頚動脈がぷりっと外に避けてくれて、気管の脇の舌骨下筋群にアクセスすることができる。
  • 頚動脈洞反射を狙い、頚動脈洞を母指腹でつぶさない。

2. 側頚部(左)

<受け方> の顔は床面に対して水平にする。右下肢もまっすぐにする。

  • 1点目、乳様突起直下はやや頭の中心に向かって圧をかける(やや突き上げ気味に)
  • 2,3点目は真下
  • 4点目はやや胸郭の方へむかって

3. 延髄部(上項線下部も)

  • 上項線下部もしっかりととると良い
  • 上項線下部を押しながらたどっていくと、項窩(ボンノクボ)も自然にみつかる。
  • 項窩はやや指先を使い、受け手の眉間の方向に向かいしっかりめに圧をかける

4. 後頸部

  • 1点目はやや頭の中心に向かって圧をかける
  • 4点目は側頚部4点目の隣にくる

5. 肩甲上部

  • 可能なら皮膚の上直接押す
  • 中指を受け手の棘突起に沿わせ、母指は肩甲挙筋をとらえる
  • 四指の引き寄せ操作により、手首の遊びをとり、四指を密着させる
  • 反作用圧にて押圧する(四指に圧力が行かないので、深部まで浸透するが、重くない圧となる)

6. 肩甲間部

膝を開いて正座をする。圧点は両の膝の間。足の爪先は立てると骨盤の動きを使え、より圧をしっかり入れやすくなる。

<通常圧法>
  • 四指を上手く使い、受け手の体幹が揺れないように修練する
  • 受け手の肩を後ろに引いて、押しやすい角度にするのではなく、そのままの角度で修練してみる(妊婦や高齢者を想定)
  • 受け手の背中が布団に対して垂直に近いくらいの角度でも、受け手の体幹が揺れないでしっかりと圧が入るようにする
  • ポイントは四指の支え。母指圧とともに四指圧も押すのではなく、四指は引き寄せるようにして支える。
  • おじきで押すのではなく、腰椎を中心とした背中の伸展に少しの肘の伸展を重ねる。
<流動圧法>
  • 1,2,3点目は片側の右手、4,5,(6)点目は足側の左手を主に使う。
  • 指圧の流動圧法とあん摩の母指揉捏は似て非なるもの。
  • (1,2,3点目)右母指を受け手の皮膚に触れ、皮膚のみを足側にずらす(皮膚操作)
  • 垂直圧で押圧する
  • ほんの少し圧を抜きながら、右母指を受け手の片側に滑らせる。(引きの指圧と組み合わせると効果的)

7. 肩甲下部

  • 前腕の角度が圧の方向をおおまかに決める。
  • 両の肩を平行に保ち、骨盤を後ろにスライドさせることにより、股関節・膝関節を屈曲させていく。
  • 前腕の角度が圧の方向と平行になった位置が、押圧に適する姿勢。
  • 圧は右母指9〜10、左母指1〜0、四指は左右ともに均等に支え圧を成立させる
  • 右肘は右大腿内側にすこし触れると、押圧時の反作用を大腿内側で受け止めることができ、安定する(決して大腿の内転により加圧するのではない)

§2 上肢の筋膜ライン(Anatomy Trainsより)

1. Superficial Front Arm Line (SFAL:浅前腕線)

Superficial Front Arm Line (SFAL:浅前腕線) は、前面では大胸筋、後面では広背筋より起こります。上腕の屈筋群と伸筋群の間には、筋間中隔と呼ばれる筋膜性の隔壁が存在し、大胸筋の筋束は内側上腕筋間中隔の前面を、広背筋の筋束は内側上腕筋間中隔の後面を覆うように走行し、上腕骨に付着しています。

これら大胸筋と広背筋の筋膜は、上腕骨内側縁より内側上腕筋間中隔へと繋がりを持ち、上腕骨の内側上顆へと向かいます。内側上顆からは前腕浅層の屈筋群(円回内筋・橈側手根屈筋・長掌筋・尺側手根伸筋・浅指屈筋)へと続き、手根管を通過して、各指の掌側面へと繋がっていきます。

また、内側上顆から起始しない深指屈筋や長母指屈筋もSuperficial Front Arm Lineに属します。

パソコンのキー入力などで指を細かく断続的に動かすときには、Superficial Front Arm Lineに負担がかかります。前腕屈筋群に張りが見られるような場合には、内側上腕筋間中隔の可動性を良くしたり、大胸筋や広背筋のリリースが効果的です。

浪越式指圧の腋窩部は、外側に流動圧法をかけるのが特徴ですが、これは内側上腕筋間中隔の可動性を良くする効果も期待できます。

2. Deep Front Arm Line (DFAL:深前腕線)

Deep Front Arm Line (DFAL:深前腕線) は、第3〜第5肋骨前面の小胸筋より始まります。鎖骨胸筋筋膜は大胸筋の深層で小胸筋と鎖骨下筋、またこれらの部位の神経や血管、リンパ管なども覆い鎖骨から腋窩へと続く筋膜です。

小胸筋は肩甲骨の烏口突起に停止しています。ここから上腕二頭筋の短頭と烏口腕筋に2つの筋が起始しています。

Deep Front Arm Lineは烏口突起を通った後,上腕二頭筋より橈骨粗面に行き、橈骨の骨膜前縁、橈骨茎状突起、外側手根側副靭帯、舟状骨・大菱形骨より母指球筋、母指の外側部へと連絡します。

小胸筋より上腕二頭筋への筋膜ラインが発揮されるのは、上肢を水平位以上に挙上した時で、とくに何かにぶら下がるなどの動きのときに Deep Front Arm Lineは強く作用いたします。

また、両腕が下垂位にあるときは、上腕二頭筋から伝わる張力のラインは、烏口鎖骨靭帯を通り、鎖骨の外側部から僧帽筋の前縁へ伝わります。また僧帽筋の上部線維は三角筋前部線維とも協力筋の関係にありますので、上肢を下垂したときの張力は僧帽筋を伝わり、後頭部へと伝わることがわかります。

3. Superficial Back Arm Line (SBAL:浅後腕線)

Superficial Back Arm Line (SBAL:浅後腕線) は、僧帽筋の幅広い起始部(後頭骨縁〜項靭帯〜胸椎棘突起)から起始して、肩甲棘, 肩峰, 鎖骨外側1/3へと向かいます。この部位は僧帽筋の停止部であると同時に、三角筋の起始部となっています。つまり僧帽筋上部線維と三角筋前部線維、僧帽筋中部線維と三角筋中部線維、僧帽筋下部線維と三角筋後部線維はそれぞれ協力筋として筋付着部位を安定化させることで、同時に働く場合が多いです。

つまり、僧帽筋上部線維が張っている人の場合は、三角筋前部線維も触れてみると、多くの場合で張りが認められます。同様に僧帽筋中部線維に張りが見られる場合は、多くの場合三角筋中部線維にも張りがみられ、僧帽筋下部線維に張りが見られる場合は、三角筋後部線維も張っている場合が多いです。

そして、僧帽筋 → 三角筋から繋がる筋膜としては、三角筋粗面 → 外側上腕筋間中隔 → 上腕骨外側上顆 → 総指伸筋(前腕伸筋群) → 各指の背側面へと達します。

日常生活において、ひとつの筋が単独で作用を発揮するということはほとんどありません。このように筋・筋膜の繋がりを中心として、機能単位で協同して作用を引き起こします。

張っていて固く盛りあがっている場所に集中してアプローチしても、なかなか緩まないこともよく有ります。このような場合はアナトミートレインのような筋・筋膜の繋がりを考え、引っ張り合いをしている他の筋肉にもアプローチすると良いです。

※ 原図では肩峰より三角筋のラインは1ラインですが、僧帽筋と三角筋の相互関係をより表現したいために、3ラインに改変してあります。

4. Deep Back Arm Line (DBAL:深後腕線)

Deep Back Arm Line (DBAL:深後腕線)は、2つの分岐線があります。ひとつは、外側頭直筋・肩甲挙筋から始まり、棘上筋を経て上腕骨頭に達する線で、もう一つは菱形筋より始まり、棘下筋, 小円筋を経て上腕骨頭に達する線です。

上腕骨頭からは上腕三頭筋 → 肘頭 → 尺骨の骨膜 → 尺骨茎状突起 → 内側手根側副靭帯 → 三角骨, 有鉤骨 → 小指球筋 → 小指外側部へと続いていきます。

Deep Back Arm Lineは、棘上筋, 棘下筋, 小円筋と3つの回旋筋腱板(ローテーターカフ)が含まれます。上腕骨頭を安定化させつつ、上肢を伸展させるような動きを行なうときに、このラインが働きます。たとえばテニスのバックハンドではDBALがとても重要となるでしょう。

腕は肩関節からでなく、肩甲骨の動きから意識して使えるようになると、身体操作に幅と深みがでます。

 終わりに

筋は単独で働くことはほとんどなく、協同して働きます。腕の線などのように1本の線のなかでひっぱりあったり、脊柱を中心に左右でひっぱりあったり。

押し方は基本の基礎を大切に。そして解剖生理を大切に。きっと、それが一番近道だと思っています。

つむぐ指圧治療室 10月20日指圧セミナー概要

  • 開催日時:令和元年10月20日
    • (セミナー参加者限定)ボディスキャン瞑想体験講座:7:30〜8:30(参加自由:無料)
      意識をつま先から頭へと巡らせながら、ありのままの感覚を観察する瞑想法です。無意識の筋緊張などを自覚し、それを解き放つ訓練にもなります。指圧療法と組み合わせることもできますし、日常のセルフメンテナンスとしても有効です。また身体の内に心の眼を向けることは、手指の感じる力を増すことにも繋がると思います。指圧三原則のひとつ『集中の原則』を体得するのにも効果的です。
    • 指圧セミナー・午前の部:9:00〜12:00
    • 指圧セミナー・午後の部:13:30〜16:30

※ ボディスキャン瞑想体験講座へ参加される場合は7:00〜7:30の間に入室をお願いします。
※ 8:30〜9:00までは自由時間兼、マインドフルネス・イーティングの練習を行なうこともできます。
※ 指圧セミナーから参加される場合は8:30〜9:00の間に入室をお願いします。
※ セミナー終了後に、ささやかな談話会も予定しています。(参加自由)

参加費;6,000円(学生・一般共に)

参加申込みは以下のフォームよりお願いいたします。
ボディスキャン瞑想体験講座にも参加希望の場合は、メッセージ欄にその旨ご記入いただけると助かります。

[contact-form-7 id=”656″ title=”10月セミナーお申し込みフォーム”]

最近の記事

  1. 夏至

    2022.06.22

  2. 小満

    2022.05.21

  3. 冬至

    2021.12.22

おすすめ記事

PAGE TOP