私が日々指圧をするのに大切にしているのは「圧の呼吸」です。
圧の呼吸は、丹田をイメージして、その膨らむ光やエネルギーが指に伝わるとか、そういうものではありません。
単に「自分自身の呼吸に気づく」だけです。
私たちの思考回路は、何か作業を行うときであれ、何もしていないときであれ、常に頭の中にとりとめのない思考や過去の思い出し、未来の想像などが浮かんでは消える状態であることが多いです。
これは、大脳生理学でいえばDMN(デフォルトモードネットワーク)と呼ばれ、脳のアイドリング状態です。
車の運転をしているときなどを考えるとよくわかるとおもいます。
私たちは車の運転をするときに、通常は「全神経を車の運転に集中」していることはないと思います。
安全運転をしつつ、常に周囲に気を配っているけど、頭の中はなにかが思い出されたり、考えたりしていることが通常です。
これは、施術の際にも同様だと思います。
注意深く患者さんの反応や手指の感覚などを感じとろうとしていると思います。
ただ、セッション全ての時間で集中するのは難しいです。
熟練した動きは半自動でできるので、頭の中にはとりとめない過去の思い出しや、未来の想像が浮かんでは消える状態が多いとおもいます。
「圧の呼吸」とは、指圧のひと押しをするときに、自分自身の呼吸の出入りに穏やかに気づくことです。
それまで波だっていた湖面が、すっと静まり周囲の風景が湖に映るように、指先から相手の体内の様子や、考えていることまでも伝わってくるようです。
自分自身の呼吸の気づきを穏やかなバックボーンとしつつ、指先の感覚を大脳辺縁系と直結させる感じです。
気を送るとか、流すとか考えなくてもいい。
感じることが大切。
今、目の前で横たわって、指圧を受けてくれている人のことを、ただ純粋に思う。
そして、ただひたすら、心をこめて指圧をする。
指圧讃歌 作詩 三石勝五郎 作曲 浜田侃
開けば天地の華かおり
握れば神秘のかぎかくす
流れ流れて先祖の血
我が手に通う尊さよ
五本の指はつながりて
一つ心に脈うてば
今日の息吹のあらたかさ
五体調和の応えあり
沢山咸は易の道
その拇に感ず拇に感ず
指圧の心 母ごころ
おせば生命の泉わく
日月あいおり時は往く
陰陽あい和し雲晴るる
我を忘れて押す指に
ひびくは奇しき力ぞや