マインドフルネスはセラピストの治療効果にも良い影響があります。
Grepmair L, et al.(2007)は、ドイツにてトレーニング中の心理療法士を無作為に2群にわけて、片方は毎回のセラピー前に瞑想指導(曹洞禅)を1時間受ける群、もう片方は瞑想指導を受けない群にわけて、患者さんに対する同じ治療法(個人セラピー、グループセラピー、ゲシュタルトセラピー、グループボディサイコセラピー、ジェイコブソンの漸進性筋弛緩法など)を9週間行い、実際の効果を見ました。
9週間における調査の結果
課題の解決化(p<0.01)、問題解決能力(p<0.01)、人間関係(p=0.091)
図1. 9週間のセラピーにおけるクライアントの能力変化(Grepmair L 2007より作図)
図1は9週間のセラピーにおけるクライアントの能力変化をグラフに表したものです。瞑想セラピスト群、非瞑想セラピスト群ともに9週間のセラピーにおいてクライアントの能力に改善効果が認められますが、特に課題の明確化と問題解決能力において、瞑想セラピスト群の方が、非瞑想セラピスト群と比較し有位にセラピー効果が高かったことが示されています。(人間関係については瞑想セラピスト群、非瞑想セラピスト群にて統計的有意差はなし)
身体症状(p<0.01)、強迫観念(p<0.01)、対人過敏性(p<0.01)、抑うつ(p<0.01)、不安(p<0.01)、怒りと敵意(p<0.01)、恐怖症(p=0.048)、妄想様観念(p=0.16)、精神病症状(p<0.01)、全体的重症度(p<0.01)
図2. 9週間のセラピーにおけるクライアントの症状変化(Grepmair L 2007より作図)
図2は、9週間のセラピーにおけるクライアントの症状変化を表したものです。こちらのグラフにおいても瞑想セラピスト群、非瞑想セラピスト群ともに9週間のセラピーにおいてクライアントの症状に改善効果が認められます。その中でも瞑想セラピスト群では身体症状、強迫観念、対人過敏性、抑うつ、不安、怒りと敵意、精神病症状、全体的重症度において非瞑想セラピスト群と比較し、改善効果が有位に高かったことが示されています。(恐怖症、妄想様観念については統計的有意差無し)
Grepmair Lらによるこの報告では、セラピストに対するマインドフルネス介入が、クライアントへの治療効果に対して良い影響を及ぼすことが示されました。
これはあくまで、心理療法士のデータですが、他の医療従事者にとっても良い効果が期待できることは間違いないと思っています。
浪越徳治郎先生が、指圧三原則の最後に「集中」を入れたこと。そのことについて、昔からずっと考察しています。
この指圧三原則における「集中」。私が思うのは、雑念がすっと消え、そして穏やかでリラックスしているけど研ぎ澄まされた集中が同居した状態のとき。スポーツの世界でいう「ゾーン」のような感覚に近いものかと想像しています。そんな状態に自然にはいったときに、治療効果はもっとも高まるのではないかと思っています。
「我を忘れて押す指に、響くは奇しき力ぞや」
校歌のこの一節は、そんな状態を謳ったものなのではないかと想像しています。
参考文献
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