指圧セミナー『押圧操作の基本(反作用圧法)+ ボディスキャン瞑想体験講座』を9月1日/15日に開催いたします。

今回は筋の触察は行なわず、午前・午後と1日かけて押圧操作の基本についての講座を行ないます。触れ方から身体の移動の方法、減圧から次の圧点へと移動するまで、それぞれの段階で注意すべきポイントが多数あります。それらを自然にできるようになるには、沢山の修練が必要です。

今回の指圧セミナーでは、各段階でチェックポイントを設けて、四指の支えは適切か?移動軸は正しいか?重心の位置や下半身の安定性は保たれているか?などを逐次チェックし、確認していくことで柔らかくかつ浸透する圧をできるようになるように修練します。

また、セミナー開始前に『ボディスキャン瞑想体験講座』を開催いたします。参加自由・無料で行ないます。手技療法との併用で相乗効果が期待できる他、施術者自身の感覚を感じる力を高め、より深い集中した状態で施術を行なう訓練ともなります。(セラピューティック・マインドフルネス)

押圧操作の基本(反作用圧法)

触れ方について

  • 繊細で優しい触れ方をすることにより、受けての安心感をもたらします。
    • 生まれたての赤ちゃんを触るくらいに、これ以上ないほど優しく触れます。
  • 人体は曲面の集合体です。手指に力が入った状態で触れると、四指のMP関節より指先までに隙間が生じ、密着感が損なわれます。
  • まずは母指をふわりと圧点に置き、手指の力を抜いた状態で、中指を気持ち(1~2cmほど)遠くへ伸ばすようにこころがけます。すると四指のMP関節までが受け手の体表に接した状態で、四指が曲面にフィットします。

※ 手指に力が入ると、PIP関節が急激に曲るなど受け手の体表にフィットしない支えとなります。どの場所を押す時であっても、MP関節~PIP関節~DIP関節は受け手の体表面に合わせて、滑らかにフィットさせます。

※ この柔らかく触れた段階では、まだ四指の支えが成立していないので、四指は容易に剥がすことができます。加圧と同時に四指も握り動作を行なうのではなく、加圧前に手首の締め動作により支え圧を成立させます。

手首の締めによる四指の支え

  • 柔らかく体表に手指をフィットさせたら、手首の遊びを取ることにより、四指を吸い付けます。
  • 肘関節はまっすぐに伸ばした状態ではなく、少し緩んだ状態より始めます。手首の締めを行なうと、肘頭はやや外側に向きます。
  • 同時に、小指・薬指のMP関節部を支点として梃子の作用が働き、母指が自然に筋膜表面までやや沈み込みます。この時に決して筋肉まで指力で押し込まないことです。
  • 皮膚に触れ、手首の締めを行なうことで、押圧前に四指の支えを成立させます。

※ 通常、手の動きとしては「回内」動作に近いイメージですが、「回内」により小指を離してしまうのではなく、小指・薬指のMP関節を密着させたまま手首の締めを行なうことで、四指が吸い付くよう密着します。

※ 肩甲下部などの多くの部位では、前述のように「回内」的な動きにより四指を密着させますが、腋窩部や大腿外側部などでは「回外」的な動きにより四指を密着させます。また肩甲上部では四指を引き寄せる動きとなります。

  • 四指のMP関節、PIP関節、DIP関節は受け手の体表に接し、母指のMP関節は屈曲、母指IP関節は伸展位、そして手掌部は指が2本入るくらいの凹みをつくるのがポイントです。手掌まで全部接してしまうと、母指圧か手掌圧かわからないようなぼやけた圧となります。
  • 母指圧と四指の支え圧のベクトルが受け手の体内で収束する場合に「支え圧」が成立します。

※ 肩甲下部を押す際に、脊柱の際を押したい為に、母指を脊柱に平行に置くと、それに伴い四指の方向が上向きと横向きにずれます。この場合、母指圧のベクトルに対し、左右の四指の圧が集まらないので、支え圧となりません。

※ 大腿後側や大腿前側(4,5点目~)では、四指の方向に注意してみます。四指尖の方向が下向きとなっている場合には、母指圧と四指圧が集まらないので、これも支えているつもりが、支えとなっていない典型例です。

※ 大腿部では四指尖は下向きではなく、やや斜め前に向けます。手の形だけ取り出すと、重ね母指と四指でボールを抱える形となります。四指先が真下に向いている場合、ボールを抱えることができません。

※ この触れ方と手首の締めによる支えまでを少し時間をかけて、丁寧に修得します。方法は、身体の各部において触れて支えを成立させ、加圧せずに、次々と場所を移す練習を行ないます。とても大切です。

✓ 触れて手首を締めた後で、小指を剥がすチェックを行ないます。小指が容易に剥がれてしまうようでしたら、支えが成立していないということです。

スタンスの角度

両下肢の方向や角度によるスタンスには「閉じたスタンス」と「開いたスタンス」があります。このスタンスの違いについて正確に理解をします。双方に利点があるので、状況や部位により使い分けができるようになると良いです。

「閉じたスタンス」
体幹の向きと前側の足指が同じ方向を向くスタンスです。体幹を前に移動させても、前側の足底で自分の体を支えることができます。

「開いたスタンス」
体幹の向きに対して、前側の足指はやや外側に開きます。前側の足で自分の体を支えることはできないので、膝を付いている側の下腿-大腿の角度が90度を越えると、圧のコントロールを失いのし掛かってしまいます。

重心の位置(開いたスタンスの場合)

  • 片膝立ちの姿勢をとった場合に、膝が接している側の大腿と体幹が真っすぐになっている場合は、重心が膝にかかっています。開いたスタンスにおいて、そこから体幹を前に移動させると、重心が膝より前方へ移動し、受け手にのしかかってしまいます。

※ 体重を上手く使うことと、のし掛かることは全く違います。

  • 重心を膝に落とした状態より、股関節と膝関節をやや屈曲させ、骨盤を後方にスライドさせることにより、重心が下腿~足背へと下がります。
  • 下腿~足背がしっかりと地面を捉えて、下半身が安定します。

※ 後ろ足(膝を立てる側)の股関節は「屈曲・伸展」のみの動きを使用します。内転・外転の動きは一切使いません。

※ 骨盤を後方へスライドさせるのではなく、殿部を後ろに突き出すように股関節を屈曲させてしまうと、下半身と上半身の連動が途切れてしまい、結果として腕の力に頼った圧となってしまいます。尾骨を前方に向けたまま骨盤を後ろにスライドするようにします。(お尻の穴が見えないようにとイメージすると分かり易いかもしれません)

✓ 膝に重心が落ちている場合は、誰かが踵を持ち上げようとした場合に、容易に踵が持ち上がります。重心が下腿~足背にある場合は、踵を持ち上げようとしても、あがりません。

軸の使い方

五円玉ネックレスを使用した体軸の移動法を学びます。

  • 五円玉ネックレスのやや先に母指を置き、圧点を定めます。
  • 五円玉が母指の真上を通る方向に体軸を移動させます。この時に移動の初動では圧を掛けないのがポイントです。身体は前に移動しますが、圧をかけずに溜めをつくります。
  • 五円玉が母指の真上を通過するタイミングで背部と肘が滑らかに伸展することにより圧が入ります。
  • 足先より下肢、殿部、背中、肘と各関節のほんの少しの伸展を積み重ね連鎖させることにより精度の高い浸透する押圧を行ないます。

※ 脊柱の伸び上がりは真上ではなく、脊柱の傾斜角に沿うように行ないます。(亀が甲羅から頚を出すような感じで)

※ 体軸と圧点が一致すると、容易に自然に浸透する圧が入ります。

※ 反作用が理解できていれば、例えば壁際のベットでの施術などでも、体軸と圧点がずれた環境においても、垂直圧を入れられるようになります。しかし、まずは体軸と圧点をしっかりと一致させた状態で練習を積み重ねるのが良いです。

✓ 普段より五円玉ネックレスを使わない場合も、常にネックレスが母指の真上を通過する方向に体軸を移動させるという意識を用いることで、身体を移動させる方向が定まります。

反作用の意識を用いた、スタンスの位置取り

反作用の意識を用いることで、受け手に対する身体の角度、膝の位置、スタンスの開き具合などの適切な位置が感覚で分かるようになります。そして、垂直に圧が入るようになります。

  • 加圧する側の母指は片手母指圧の形をとります。
  • 反対側の母指と示指でつまみ手をつくり、片手母指圧の形をとっている手の爪の部分につまみ手をセットします。
  • つまみ手の肘の角度は変えずに、片手母指圧側の背中と肘の伸び上がり動作を行い、つまみ手から「(仮想の)透明な糸」を圧の方向と真逆に引き上げる動作を行ないます。その動作が自然に行なえる膝の位置、体幹の向きが、押圧に最も適した位置取りとなります。

反作用圧の利点

  • 上下に貫通するベクトルに基づいた動きで加圧するので、垂直に圧が入るようになります。
  • 柔らかく軽いのに深部まで浸透する圧になります。
    反作用を上手く使えた場合、母指より体幹を遠ざかる動きを加えることで、母指のみに圧が伝導され、四指は包み込む支え圧に徹することができます。

※ 指先に体重を乗せる圧法の場合、圧の方向がやや突き上げ圧になっていたり、付き下げ圧となっているなど曲っていても、術者がそのことに気がつきにくいです。

※ 指先に体重を乗せる圧法の場合、母指のみでなく四指にも体重が分散してしまいがち。圧の質が「重く」なります。

減圧から次の圧点への移動

  • 肘を伸展させた状態で、身体を引くことで減圧をしない。体幹を引かずに、腰・背中・肘にかけての弛緩で減圧する。
  • 圧が抜けてから、体幹を後ろに引く。それに付随して母指が次の圧点へと移動する。
  • 指の移動順番は,重ね母指をほんの少し解き、四指はそのままで、母指のみ次の圧点へと移動させる。そして次に両手の四指を移動させ、ふたたび四指をMP関節より力が抜けた状態で体表の曲面に沿わせて、手首の締めを使い、四指を密着させます。

※ 自分が人型の風船であることをイメージ。風船から空気が抜けるように、背中と肘を「その場」で弛緩させる。すると背中と肘がやや屈曲し、受け手にすこし近づく。

※ 背中と肘を弛緩させ、受け手に少し近づいた状態を作らないと、次の圧点での「伸びしろ」が無くなってしまい、肘と背中の伸展による押圧ができなくなります。

弛緩を効率良く導く減圧法

  • 減圧時に、肘と背中の弛緩を行い、母指で受け手の組織の反発力を感じるようにします。この「圧がかかっているけど、引いている時間」、すなわち押しながら引くという状態を作り出すことで、スパズムを低減させる効果は格段に高まります。(引きの指圧)
  • この減圧する瞬間に、受け手の組織の反発力を受け止めるようにすることが弛緩を促すということが感覚で分かると、ごく弱い圧で緩めることができるようになります。
  • コリは潰さずとも、緩めることができます。筋肉さんに教えてあげればいいんです。『ここが凝っているんだよ』と。 それは短縮している筋の筋膜にアクセスすればその情報は伝えられます。
  • 漸増し、持続圧の段階で『ここが凝っている』という情報を受け手の大脳へ送ることができます。
  • その状態より、受け手の組織の反発を優しく受け止めながら、圧を緩めることにより、受け手のこころと筋肉さんが安心します。『あぁ。普段は気がついていなかったけど、いつのまにかここには力が入って緊張がたまっていたんだな。ここはこんなに緊張したりしなくていいんだな。。。』と。
  • そうすると、自然と緊張がとけ、神経系のレベルから自分自身でふわりと緩みます。
  • 「指圧はぐいぐい力を入れて圧されるもの」と思っておられる方が多いかと思います。ですが、実は指圧はとっても優しい手技なんです。筋線維を捻じらず、切らず。指圧は無理やりコリを潰すのではなく、身体にそっと優しく働きかけ、弛緩や調和を促します。

つむぐ指圧治療室 第3回指圧セミナー(令和元年9月1日/15日)概要

  • 開催日時:令和元年9月1日/15日
    • (セミナー参加者限定)ボディスキャン瞑想体験講座:7:30〜8:30(参加自由:無料)
      意識をつま先から頭へと巡らせながら、ありのままの感覚を観察する瞑想法です。無意識の筋緊張などを自覚し、それを解き放つ訓練にもなります。指圧療法と組み合わせることもできますし、日常のセルフメンテナンスとしても有効です。また身体の内に心の眼を向けることは、手指の感じる力を増すことにも繋がると思います。指圧三原則のひとつ『集中の原則』を体得するのにも効果的です。
    • 指圧セミナー・午前の部:9:00〜12:00
    • 指圧セミナー・午後の部:13:30〜16:30

※ ボディスキャン瞑想体験講座へ参加される場合は7:00〜7:30の間に入室をお願いします。
※ 8:30〜9:00までは自由時間兼、マインドフルネス・イーティングの練習を行なうこともできます。
※ 指圧セミナーから参加される場合は8:30〜9:00の間に入室をお願いします。
※ セミナー終了後に、ささやかな談話会も予定しています。(参加自由)

一日の講座の時間を全て使い、押圧操作の基本(反作用圧法)を学習いたします。

参加費;6,000円(学生・一般共に)

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