腹部指圧(按腹)を行なうにあたり、臓器の位置関係はもちろん、膜構造についてもよく理解しておく必要があります。手指の下でふれる臓器達の感覚。肝臓と腸管の押した感じの違い、胃体部と幽門の抵抗感の違い、小腸や大腸の走行をイメージしつつ、滞りがないかなど。手指の感覚を研ぎ澄まさせて、お腹の中の臓器達に敬意を持って触れていきます。内臓器系の解剖学を詳細に理解しておくことが大切です。
腹膜内臓器
全面にわたり腹膜に包まれている臓器。臓器を覆う腹膜を「臓側腹膜」といいます。また体壁を裏打ちする腹膜は「壁側腹膜」といいます。両者は腹膜が合わさった構造である「間膜」により連絡します。
- 胃:食べた食物を胃酸と混ぜ合わせ粥状にする。
- 噴門:第11胸椎左側。胃の入り口。
- 幽門:第1腰椎右側。胃の出口。発達した括約筋(幽門括約筋)があり、弁として機能する。
- 胃の区分:胃底・胃体・幽門部よりなる
- 胃底;噴門の左側で、噴門より上の部分。
- 胃体:胃の中央の部分。
- 幽門部:幽門洞と幽門管よりなる。幽門洞は幽門管の手前の膨隆する部分。幽門管は幽門の手前3cmほどの部分
- 小網:胃を覆う腹膜が合わさり、小弯側より肝臓へと続く間膜。肝十二指腸間膜、肝胃間膜、胃横隔間膜よりなります
- 大網:胃を覆う腹膜が合わさり大弯側より下方へ垂れ下がった間膜。裏面は横行結腸に付着した後、横行結腸間膜に癒合して後腹壁に達します。
- 空腸
- 十二指腸空腸曲:腹膜の後ろを走行する十二指腸から、腹膜に包まれた空腸へと移行する部分。第2腰椎左側。
- 腸間膜小腸(空腸・回腸)のうち、はじめの2/5。主に左上腹部に位置する。内面は輪状ヒダが多い
- 回腸
- 腸間膜小腸のうち、終わりの3/5。主に右下腹部に位置する。輪状ヒダは少ない。
- パイエル板(集合リンパ小節):空腸下部に存在。腸管の扁桃とも言え、免疫応答を行なう。
- 腸間膜小腸のうち、終わりの3/5。主に右下腹部に位置する。輪状ヒダは少ない。
- 横行結腸:胃の下で、右上腹部から左上腹部へ向かい横走。中央部はやや下がっています。内容物は粥状。
- S状結腸:回腸に半ば隠れるように、腸骨窩に沿いやや深いところを走行している。内容物は半粥状から塊状。
- 脾臓:左側胸部、第11肋骨の下。通常では触れにくいが、吸気時に横隔膜が下がってくるのに従い、脾臓の下縁が下がってくるのを感じる場合がある。脾腫の場合に顕著
- 卵巣:小骨盤腔。血管裂孔より2横指内方
- 卵管
- 虫垂
- マックバーネー点:右の上前腸骨棘と臍を結ぶ線で、右の上前腸骨棘から1/3。
- ランツ点:左右の上前腸骨棘を結ぶ線で、右の上前腸骨棘から1/3のところ。虫垂の根本にあたる
半腹膜内臓器
一部分が腹膜に覆われていない部分がある臓器。
- 肝臓:肝鎌状間膜により厚くて大きい右葉と薄くて小さい左葉に分けられる。打診にて濁音を生ずる。
- 右葉:右季肋部の下。吸気時に横隔膜が下がるのに伴い、肝下縁が右季肋部より出てくるのを触れることができる
- 左葉:鳩尾の直下で触れることができる。
- 膀胱:恥骨結合の後方
- 子宮:膀胱の後ろに子宮頸部が存在。子宮体部は前傾前屈位となり、膀胱の上面にややせり出してくる。
- 直腸:S状結腸が仙骨前面に達すると直腸となる
- 盲腸:回盲口より下の部分。マックバーネー点が相当
- 上行結腸:回盲口より上の部分。
- 下行結腸:左結腸曲より左腸骨窩に向けて下る
腹膜後臓器
腹膜の後ろで、後腹壁に存在している臓器
- 腎臓:第12胸椎〜第3腰椎の範囲で、後腹壁に半ば埋もれるように存在。右腎のほうが左腎に比べて1/2腰椎分低い
- 副腎:左右の腎臓の上部に帽子のように載る
- 十二指腸:幽門部(第1腰椎右)の先より、十二指腸空腸曲(第2腰椎左)まで。長さ約25cm(指12本分)。上部・下行部・水平部・上行部の4部に分かれ、膵頭部をC字型に取り囲む
- 膵臓:膵頭・膵体・膵尾よりなる。膵頭部は十二指腸に取り囲まれる。膵尾は脾臓に接する
- 尿管:左右の腎臓より後腹壁を下る。大腰筋の前、精巣・卵巣動脈の後、総腸骨動脈の前を交差する。
- 下大静脈:正中線より右側。第5腰椎の高さで左右の総腸骨静脈が合してできる
- 大動脈:横隔膜の大動脈裂孔より腹大動脈となり、脊柱のほぼ前を下行、第4腰椎の高さで左右の総腸骨動脈に分かれて終わる。
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