本日の朝活マインドフルネスでは、明日本番を迎えるマラソン選手の方がいらっしゃいました。本番前にメンタルの状態を整え、リラックスした気持ちで大会を迎えたいとのことです。
そこで今日はアスリートの方々が “ゾーン” という状態に入りやすくなるように、マインドフルネスの理論的解説を含めながらマインドフルネス瞑想を行いました。
ゾーンとは?
主にスポーツの世界で使用される用語で、穏やかなリラックスを伴う集中状態に適度な興奮が同居した状態。感覚が非常に鋭くなり、自分自身、そして周囲の状況などを俯瞰して把握でき、瞬時の直感的判断もより良い方向に働く場合が多い。競技においては、非常に優れたパフォーマンスを発揮できる状態のこと。心理学の世界では「フロー」と呼ばれる。時間感覚が変化することもよくあり、その場合ボールや人の動きが非常にゆっくりに感じたりするようです。
マインドフルネスのトレーニングはゾーンに入りやすい状態を作り出します
このようにゾーンの状態は、競技などに集中し没頭した状態です。余分な思考活動が入らない、「今・此処」の状態。そして恐らく「私」というのはとても小さくなっている状態です。ゾーンの状態というのは狙っていつも入れるようなものではないですが、マインドフルネスのトレーニングを積み重ねることで、ゾーンに入るための準備を効率良く整えておくことができると考えます。
サマタ瞑想は「集中」を養う
ありのままの呼吸を観察するのがサマタ瞑想(止瞑想)です。注意対象は「呼吸」で、外鼻孔の周辺に意識を集中させ、鼻の穴を空気が出入りする感覚を観察します。たとえば「少し冷たく乾燥している空気が鼻の穴から入ってくる」
「肺から出て行く空気は、すこし湿っていて生暖かい」など
呼吸のリズムや滑らかさなど、一息一息違う呼吸をありのままに観察します。
鼻孔の周囲の感覚がいまいちしっくりこない場合は、呼吸に伴う胸やお腹の動きに意識を集中させてもかまいません。その場合は「ふくらみ・ふくらみ、ちぢみ、ちぢみ」と観察いたします。
鼻の穴を空気が出入るする感覚であれ、胸やお腹の動きであれ、注意を1ヶ所に留めておくのは意外に難しいことがすぐにわかると思います。心はすぐに何かを「想い出し」、そして「考え」はじめます。これは私たちの脳がそのような構造でできているから当然のことです。これを禅の世界では「雑念」といいますが、雑念=ダメということではありません。あくまで思考活動(雑念)に気がついたら、それをそっと手放し、また呼吸の観察に戻ってあげる。それだけです。このように、次から次へと浮かんでくる想起や思考に気づき、それを一度受け入れ、やさしく手放す。それを繰り返していると、だんだんと心が平静さを獲得していきます。
このサマタ瞑想は注意作用の「集中」と「持続」のトレーニングとなります。そして「平静さ」も同時に養われていきます。
ヴィパッサナーは「洞察力」を養う
ヴィパッサナー瞑想は観瞑想とも言われます。こちらは注意の対象を次から次へと移動させていきます。具体的には頭より始めて足先まで、そして足先から頭まで。注意し観察する対象を移動させていきながら、その部位に生じているありのままの感覚を感じ取っていきます。まずは頭のてっぺんから。注意を向けますと、そこには大抵なにかしらの感覚が生じています。温度や湿度、むずむずする感じ、痒い感じなど。感覚の種類は重要ではありません。ただありのままの感覚を観察すること。そのプロセスが「注意作用の移動」のトレーニングとなります。頭が観察し終えましたら、次は顔、首と身体を降りていきます。まずは皮膚表面。そして筋肉の様子や骨の感覚にも心の眼を向けてみます。
上肢は左と右を別々に観察してもいいですし、左右同時に観察することも可能です。これは「注意作用の分割」のトレーニングとなります。上肢の観察が終わりましたら、また体幹へと戻り、足先まで注意を移動させながら、感覚を感じ取っていきます。
途中に無意識的な緊張などを観察できましたら、息を吸い、そして息を吐くときに解放することができます。普段は気がつかないような細かな身体の緊張も観察し、それに気づくことで解き放つことが可能となります。
このようにヴィパッサナーでは、注意の対象を次から次へと移動させていきながら、身体の各部位の感覚を観察していきます。そして同時に思考が起きればその思考を。本音が湧いてくればその本音も観察対象とします。どのような感覚であれ、思考であれ、現われてきたことを一度やさしく受け入れ、そしてそっと手放します。何度でも何度でも。
身体という枠組みの中で、注意作用を移動させることになれてきましたら、注意の対象を自分の身体より広げることも可能です。たとえば自分の周囲30cmまで観察対象を広げてみます。空気の流れなどは皮膚表面のうぶ毛により感じることができます。次は自分の周囲2mほどにまで広げてみます。もしくは部屋の空間全体まで広げてみます。場全体をまるごと包むような感覚です。これは注意作用をパノラマ的に広げる訓練となります。
同時に、音として入ってくる外の世界の活動音や気配など。それらもありのままに認識していきます。
始めは観察対象は自分だけでした。それを自分の周囲と広げていくことで、自分を小さく・小さくしていきます。自分の内的状態を掌握しつつ、周囲の状況などを俯瞰する能力がついてきます。
心臓呼吸(コヒーレンス法)で、適度な交感神経緊張をスパイスのように加える
サマタやヴィパッサナーで集中していきますと、呼吸は非常にゆっくりになっていくことが多いです。このような状態、特に呼気が長くなると副交感神経が優位となってきます。これは呼吸生理学で吐く息は副交感神経を高め、吸う息は交感神経を高めるような仕組みとなっているからです。
たとえば、不安が強い場合などは吐く息を長くすることにより副交感神経が優位となりリラックスが得られやすくなりますが、スポーツの現場などではリラックスしていながら昂揚した状態が自己効力感を高め、パフォーマンス向上に役立つと思われます。そこでおすすめの呼吸法が心臓呼吸(コヒーレンス法)です。これは吸う息と吐く息を6秒ずつに固定します。6秒で息を吸い、6秒で息を吐いていきます。この心臓呼吸(コヒーレンス法)を行なうと、自律神経の影響に伴う心拍変動が正弦波に近くなっていくことが知られています。
そして、パフォーマンス向上に高い効果が期待できるのが「感謝」の感情です。心臓呼吸(コヒーレンス法)では、注意対象を心臓として、心臓(ハート)を感謝の気持ちで満たしていきます。自分自身が今ここにいられること。フィールドに立っていること。自分をささえてくれている家族、友だち、そして愛する人。大切で無垢な存在であるペット。他のプレイヤーや選手達。この「感謝」の気持ちというものは、とても強力に作用することが期待されます。
改めてゾーンの状態を想像してみる
私は人前で競技を行なうようなアスリートではありませんが、一度だけ、中学の部活動での試合のときに、こんなゾーンに近い感覚を体験したことがあります。バスケをやっていたのですが、シュートを外す気がしないのです。穏やかな集中と昂揚感が入り交じった状態。周囲の状況がとても良く読めた状態であった覚えがあります。そんなのは、私個人の昔の思いでの一つに過ぎませんが。
オリンピックで活躍するような選手を想像してみます。想像力を働かせるのは自由ですから。
呼吸は滑らかで、不安は一切ない。やることややってきた。
感覚がとてもするどくなっている。指先がすこし膨張し、電気が充満したような感覚。空気の流れもうぶ毛が感じる。
見えるもの。聞こえるものはそのままありのままに知覚する。そして見えないものも空気の流れの変化でわかるような気がする。
自分がいまここにいられること。支えてくれている全ての人にありがとう。
自分自身がどんどん小さくなっていく。
考えなくてもいい。ただプレーをすればいい。
自分ががんばっていいプレーをするのではない。
そこにはただ「いいプレーだけがある」
さぁ。いこうか。
きっと、そんな状態なのではないかなと想像します。
サマタ瞑想やヴィパッサナー瞑想、心臓呼吸(コヒーレンス法)は、ゾーンに入りやすいような状態をひとつひとつ満たしていく訓練となると思います。もちろんゾーンに入らないまでも、メンタルを整えることでパフォーマンスの底上げ効果が理論的に十分期待できます。
明日の良いRunを期待し、願っています。
私も明日は横浜マラソンの会場にコンディショニングケアの施術ボランティアとして赴きます。
完走した後は、ぜひ指圧を受けてください!
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