胃・十二指腸・膵臓の血管支配

胃・十二指腸・膵臓の血管支配

腹部内臓は腹大動脈の枝により血液供給を受けています。腹大動脈から消化管に至る血管としては、腹腔動脈・上腸間膜動脈・下腸間膜動脈の3系統があります。ここでは上腹部に存在する胃・十二指腸と膵臓の血管支配について確認いたします。

腹腔動脈

  1. 左胃動脈 left gastric artery: 胃の小弯に沿い左から右に走り、右胃動脈と交通します。胃の小弯並びに噴門に分布します。
  2. 総肝動脈 common hepatic artery: 右胃動脈と胃十二指腸動脈を出した後に、固有肝動脈となり肝臓を栄養します。
    • 右胃動脈 right gastric artery: 胃の小弯に沿い、右から左に走り、左胃動脈と交通します。幽門部に分布します。
    • 胃十二指腸動脈 gastroduodenal artery: 幽門、十二指腸上部の後ろを下行し、右胃大網動脈と上膵十二指腸動脈に分かれます。
      • 上膵十二指腸動脈 superior pancreaticoduodenal artery: 十二指腸上部で胃十二指腸動脈より分かれ、さらに前上膵十二指腸動脈と後上膵十二指腸動脈に分かれます。十二指腸上部、膵頭に分布し、上腸間膜動脈の枝である下膵十二指腸動脈と交通します。
      • 右胃大網動脈 right gastroepiploic artery: 大弯付近と大綱に分布します
    • 固有肝動脈 hepatic artery proper :総肝動脈の終枝。小網の肝十二指腸間膜中を走り、肝門にいたり、肝臓に分布します。
  3. 脾動脈 splenic artery :胃の後側から膵臓の上縁を左方に走り、脾臓に達します。
    • 膵枝 pancreatic branches:膵体部から膵尾部にかけて分布
    • 短胃動脈 short gastric arteries: 胃底部に分布
    • 左胃大網動脈 left gastroepiploic artery:胃の大弯に沿い左から右に走り、右胃大網動脈と交通します。胃の大弯部の両面および大網に分布します。
    • 脾枝 splenic branches:脾臓に分布

上腸間膜動脈

  1. 下膵十二指腸動脈 inferior pancreaticoduodenal artery :上腸間膜動脈の上部で右側から出て、前下膵十二指腸動脈と後下膵十二指腸動脈に分かれます。上膵十二指腸動脈と交通し、膵頭部における動脈アーケードを形成します。
  2. 空腸動脈・回腸動脈 jejunal arteries, ileal arteries :合わせて15〜20枝あり、分岐や吻合を繰り返しながら動脈網をつくり、空腸・回腸に分布します。
  3. 中結腸動脈 middle colic artery :横行結腸に分布する動脈で、その右枝と左枝は右および左結腸動脈と交通します。
  4. 右結腸動脈 right colic artery :上行結腸に分布する動脈で、その上行枝は中結腸動脈と、下行枝は回結腸動脈と交通します。
  5. 回結腸動脈 ileocolic artery :回盲部、上行結腸初部に分布します。虫垂に向かう虫垂動脈を分岐します。

腹部指圧における解剖学の理解について

腹部指圧(按腹)において、お腹の中の臓器達について、ありありとしたイメージを持つことはとても大切です。

私は首都大学東京の大学院にて膵臓の発生と血管支配についての研究を行ないました。実は膵臓というのは胎生期に腹側膵芽と背側膵芽という2つが癒合してできます。この際に、背側膵芽は腹腔動脈の枝に、腹側膵芽は上腸間膜動脈の枝から血液供給をうけながら癒合しますので、膵臓周囲の血管支配についてはかなり複雑となっています。

筋肉の触診についても同様ですが、施術している手指の下に何が有るのか。イメージができることが触診力の向上へとつながります。逆に言えば、構造に対する理解が不足している場合、指先の感覚受容器が微細な情報を感知していたとしても、脳がその情報を違いとして知覚することができないことが多いです。

治療を目的とした施術を行なう場合には、解剖学がなにより大切であるというのが、私と当治療室の方針です。

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