「痛い圧」と「痛くない圧」がどっちも効果あるとしたら、どちらがいいでしょう。
強く圧すことと、深く圧すこと。違いはわかると思いますが、使い分けできますでしょうか。
柔らかく深い圧はどうでしょう。

自分もクライアントもリラックスした状態で、深部のコリに届くひと押し。
温泉につかった瞬間のような気持ちよさ。

手技療法の中でも知名度の高い「指圧」ですが、指圧にどんなイメージをお持ちでしょうか。

世間一般での指圧のイメージは「指でグイグイと押すもの」という印象が強いようです。
そして、施術者の側でも「体重をのせて強く押す」のが良いと考えている方も多いと思います。

ですが、私が当セミナーでお伝えしたい指圧は、
「グイグイ押さない指圧」
「体重をかけない指圧」
です。

「体重をかけないで圧をかける」にはどうしたらいいでしょう。

ふわりと触れ、それから足先から体幹、肘〜指までの連動動作で圧を伝えていきます。

太極拳の身体操作に少し似ていると思います。そして反作用を意識し、感じ、圧にします。
難しそうに聞こえるかもしれませんが、多少の理論を知り、練習することでできるようになります。

「体重をかけない反作用圧」は、決して「弱圧(よわおし)」ではありません。
繊細で柔らかい圧もでき、そして、深くまで浸透する圧や、強く爽快な圧も安全に精度を保って行なうことができます。

<この講座の特徴>

特徴1「触れ方」を大切にします

押すこと、揉むことに気を取られて、触れ方についてはあまり注意をはらっていない方をみうけます。
しかし、「触れ方」は押圧以上に大切なものです。

人体はさまざまな角度の「曲面」でできています。

手指の力が抜けた状態で体表面へと触れることにより、身体のどの部位であってもフィットさせることができます。指の置く順番も大切です。まずは母指、そしてほんの少しの時間差で中指が触れます。中指は四指の支えの中心軸となります。中指をほんの少し。気持ち指の長軸に沿い1cm〜2cmほど遠くに延ばすように触れます。すると母指から液体が広がるように四指が面となり体表面にすっと広がりフィットします。四指はMP関節まで触れることで、包まれるような支えが可能となります。

この時に、手掌が全部相手の身体に触れてしまうと、母指圧だか掌圧だかわからない「ぼやけた圧」になります。手掌は少し凹ませカップ型にして四指MPや小指球、母指球は触れているけど、労宮は少し浮いているようにいたします。すると、包まれるような支えに両立した深く浸透する母指圧が可能となります。

そして、この触れ方が会得できると、触診力もかなり向上するはずです。指に力がはいっていると、メルケル盤などの強度検出器ばかりが働き、触診力が低下しますが、ふわりと触れることによりマイスネル小体による速度検出器が効率良く働き、指の下で筋肉がどのような様子になっているかがとてもわかるようになってきます。

特徴2「支え圧」を大切にします

柔らかく体表に手指をフィットさせたら、手首の遊びを取ることにより、四指を吸い付けます。
(押圧前に手首の締め動作により支え圧を成立させます。)
包むような支え圧が受け手のカラダをひらいて、圧を受け入れる準備をととのえます。

指圧は母指だけで押すのではなく、この四指による「支え圧」がきわめて重要です。支え圧があるからこそ、母指圧が体内で散らずに浸透していきます。

特徴3「体重を載せない」(反作用法)

「体重を載せない」からといって、手先だけで押すのではありません。

上虚下実の状態で安定したスタンスで構えをつくります。

そして足関節 – 膝関節 – 股関節 – 脊柱起立筋 – 肘関節の伸展を連鎖させることで圧をかけます。
風船に空気が入る時のように、膨らむような力を押圧に活かします。

押圧には「反作用」を意識します。

体重を指先に集める押し方の場合は、母指先からの「作用」のベクトルで圧をかけます。
反作用法の場合は、母指先から圧を入れたい方向(作用)と真逆の方向(反作用)に遠ざかるように身体を動かします。

しかし、本当に反作用の方向に遠ざかったら、圧になりません。反作用を受け止める壁を意識する(つくる)ことで反作用の動きで(作用の方向に)圧が入っていきます。ふくらはぎなど、比較的弱い圧でよい場合には、押し手の上腕あたりで反作用を受け止めて(壁)あげれば十分に圧がはいります。しかし腰部のように深い圧や強い圧を入れたい場合は反作用を受け止める壁をもっと遠くにおきます。つまり膝から足背です。すると地面からの床反力を圧へと転換させることができます。そこから足背で床面をさらに押すようにすれば、強靭な足腰の筋力から発生する力を指先に伝えることができます。

身体の使い方としては、圧点より圧を入れたい方向の真逆のベクトルに沿い動きます。この時に背部や肘の伸展とともに肩の位置もいっしょにあがってしまうと圧になりませんが、肩の高さが変わらないようにして伸び上がりの動作をおこなうと、圧がはいっていきます。これが「反作用を用いた指圧法」です。

これにはいくつかの利点があります。

① 圧がまっすぐ入る
② 母指圧がしっかりと浸透し、ずっしりとした重さは抜ける
③ 足背からの床反力を伝導することで、より深い圧が可能
④ 微細な圧コントロールが可能
⑤ 「引きの指圧」が可能となる

圧のコントロールを常に保てるということは、自分が押して、その次に受け手の組織からの反発力を受け止めるようにして減圧する「引きの指圧」が可能となります。「ゆっくり引く」のとは少し違います。「押しながら引く」という時間がうまれます。これにより受け手のコリや筋緊張がふわっと緩むことがよくあります。

第1回 押し方・触察法の基礎・うつぶせ 背中
<反作用圧>
・皮膚への触れ方
・四指の支え
・手首の締め
・軸を整えること
・体重圧と反作用圧
・スタンス(閉じたスタンス、開いたスタンス)

<引きの指圧>
・減圧時に弛緩を誘導する方法
・緩圧法

<触察法の基礎>
・触察した筋をつぶさない
・示指を交叉させ、中指と薬指を一直線にさせ立体的にスキャンするように触察
・指紋部のヨレをつかいマイスネル小体で触察する

<うつ伏せ 腰背部の指圧法>
・うつ伏せ 腰背部は圧法の一番基礎となる部分です。この部位をつかって、触れ方や軸の使い方など基礎となる部分を習得します。

第2回 うつぶせ 背中・腰・殿部
<触れ方・圧法のおさらい>
反作用圧、引きの指圧について再度確認します。非常に大切な、この指圧講習会の根幹となる重要なところです。

<うつ伏せの基本指圧操作>
・肩上部
体重圧と反作用圧の違いがわかりやすいところ。双方の圧の違いを認識します
・背部
スタンスの位置取りのコツ
上背部が緩みにくい場合のコツ
・腰部
腰部でより深い圧を入れる場合の、床反力の使い方
・殿部
圧方向が斜めになる場合の押圧法

第3回 下肢
<腰痛タイプの確認と重点部位>
平背タイプと反り腰タイプ
<うつ伏せ>
・殿部(おさらい)
・大腿後側
膝が伸びにくい場合
・膝窩部
膝窩のコリがとれない場合
・下腿後側
浅層:下腿三頭筋
深層:長趾屈筋、後脛骨筋、長母趾屈筋
下腿深層のコリがとれない場合
・下腿把握圧
腓骨筋群
吸引圧法
・アキレス腱と踵骨隆起
・屈筋支帯と腓骨筋支帯
・足底

<仰向け>
・鼠径部の指圧
・腸腰筋が短縮している場合に有効なポジショナルリリースを併用した緩圧法
・大腿前側
大腿四頭筋のハリがとれない場合の流動圧
・大腿内側
四指の支えを有効に使い、股関節が動揺しないように押圧する
・大腿外側
腸脛靭帯の通常圧法と流動圧
・膝蓋骨周囲
・下腿部
・足関節部、足背部
下腿部がなかなか緩まない場合には
・足趾
・足趾関節運動(片側で細かい振動)
・下肢伸展

第4回 上肢・肩まわり
<仰向け>
・腋窩部
・上腕内側
筋間中隔と上腕動脈、正中神経
・肘窩部、外側上顆と内側上顆
・前腕前側
・三角筋胸筋溝、鎖骨下部、胸筋
女性に施術する場合の注意点
上肢の他動運動を併用し胸筋をリリースさせる方法
・仰向けでの肩甲挙筋、棘上筋、棘下筋
・僧帽筋上部線維と三角筋
・肩甲下筋
・上腕外側
上腕三頭筋の基本指圧操作
アナトミートレインを応用した流動圧
・前腕外側
腕の重さを利用しズリ圧を少し入れると効果的
・手背部、指
・手掌部
・上肢の伸展

<うつ伏せ:背部の基本操作に加えたほうが良いケースについて>
・棘上筋と棘下筋
・菱形筋と前鋸筋
・肩甲骨の外側
広背筋と大円筋
小円筋
・四指をつかった三角筋と胸筋への筋筋膜リリース

第5回 頚部・横向き
<横向き>
・前頚部
胸鎖乳突筋(容易)
舌骨下筋群、椎前筋(少し難しい)
・側頚部
斜角筋群
・後頭下筋群(風池、天柱)と唖門
・後頚部
僧帽筋上部、頭板状筋
・肩上部
肩甲挙筋
・上背部(肩甲間部)
・腰部(肩甲下部)

第6回 腹部・仰向けでの頚部・極弱圧での指圧法
<仰向け>
・超弱圧で頚部をリリースする方法
(寝違えで頚がまわらないケースや、強い圧がダメな場合に有効)
・腹部
腹部押圧のコツ
(どれくらい入れるかは自分が決めるのではなく、受けてのお腹がきめる。入るだけ入れさせて頂くという心構え)
筋肉に、お腹に安心してもらい、自ら開いてもらう(緩圧法)
・腹部掌圧と四指圧
労宮をほんの少し凹ませ、手掌全体をややカップ型にして押圧する(手指をそらせない)
・腹部の母指圧(大きな円とヘソ周りの小さな円)
・下行結腸、S状結腸部の手根圧
・上前腸骨棘への左右手掌圧(仙腸関節に作用させる)
・腰部の四指圧
(うつ伏せになれない高齢者への腰部としても応用できる)
・微細な振動圧

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